
「ナインデイズー岩手県災害対策本部の闘い」 河原れん著 幻冬舎刊
この本、今話題なのだすが、どこの書店で買おうと思っても売ってない。売り切れ~?!!
増刷中ですかね?
てんこちゃんは、書店にないので、たまたま行った図書館の新刊コーナーに並んでいるのを見てソッコーで借りた。しかし、いろいろ忙しくて読めなかったので延長してもらおうと手続きに行ったら、「予約が入っているから、早くお願いします。」と言われ、急いで読みますたヨ。
なので、あした、図書館に返しに行きまする。
著者の河原れんサンは、こないだクールのドラマ「聖なる怪物たち」の原作者で、てんこちゃんは男性だとばかり思っていた。
しかし、女性と知り、そーいえば、このドラマ、代理出産をめぐるミステリーだったから、女性視点だよなぁと合点がいった。
ま、ドラマのハナシはいいとして読んだ本の感想。
これは、タイトルから感じる通り、東日本大震災直後からの9日間の県庁災害対策本部の闘いを描いている。
岩手医大救命救急センターの秋富医師の視点で、震災発生時からの9日間を描く。
河原れんさんは、当時のことを丹念に取材した上で、この本を書き下ろしたと思うので、この秋富医師も巻末の取材協力者に名を連ねているし、県庁災害対策本部の面々や知事も実名だし、被災地も全部現実の地名になっている。
だから、これは、ノンフィクションのジャンルに入ると思うけど、幻冬舎のHPで検索するとなぜかこのジャンルに入ってないし、かといって小説で検索してもサーチしない。
秋富医師のことを調べたら、向井理クンがナビゲーターを務める、TBS系列の番組「夢の扉」で2009年に、災害現場の真っ只中で救命救助をしようと行動している医師として放送されていた。
秋富医師は、JR福地山線事故現場でレスキューした経験があり、救急医療に従事し災害医療の改革にまい進する医師として紹介されていた。
その医師が、岩手県に異動した2か月後に、岩手・宮城内陸地震が起きた。
当時は縦割り行政で、災害時の救急救命医療の統率組織が出来上がっておらず、救える命も救いかねない状況だった。
そこで、秋富医師は奔走し行政を動かし、岩手独自の災害救助システムを構築し、訓練もするのだけど、その半年後、未曽有の災害が起きてしまう。
地震後、真っ先に秋富医師は県庁に行った。
それからの9日間の災害対策本部での一日一日、刻一刻と変わる被災地の状況。混乱する現場。
震災当初は、通信手段も無く、被害の状況が全くわからない。
要救助者の捜索、困難を伴う重症患者の搬送、枯渇する燃料の供給、厳寒の中の被災者の食糧調達、不足する医薬品、支援物資の輸送、日が経つにつれ、遺体の収容先、避難先の衛生問題、治安問題、と課題は山積していく。
その上、福島の原発事故。
政府の対応の鈍さ。
被災地の医療現場では、県の対応の遅れを非難される。
対策本部の職員も人間だ。不眠不休で対応し、疲労と空腹で、思考もどんどん疲弊してゆく。
阪神・淡路大震災を契機に、DMAT((災害派遣医療チーム)が、この震災でも派遣され、全国のDMATの資格を持つ医療チームが支援に来たことを、今回の震災で、初めて知ったけれど、派遣期限は急性期支援(72時間)とされ、期限がきて次々と医療チームが撤退しようとした。
ニュースでは、実際、現地に言ったら、阪神・淡路の震災と違い、今回の震災は津波で、急性期に手当する患者が予想より少なかったって判断し撤退を決めた、と報じられたように思う。
秋富医師は、今後、慢性患者や被災者の感染症も考えられ、医療者の支援が益々必要になることを予想し、支援延長を要求するが、にべもなく強固に断られる。
そんな課題も浮き彫りにされた。
震災発生から9日間、災害対策本部、行政、医療、自衛隊、消防、警察・・・どのように動いたか、克明に記されている。
盛岡に住んでいると、実際の被災地からへだたりがある為、当時のことを思い出してみても、3日間くらいはライフラインがストップしたけれど、それ以降はガソリンの調達に苦労したくらいで、市民の生活は支障は被災地に比べたらさほどのことではなかった。
未曽有の災害の中、特に、秋富医師のような人が、岩手の救命救急に携わっていたことは、心強いことだと思った。
巻末に、著者が、震災が人々の記憶から忘れることがないように、また、今後の防災対策の布石となるために、取材に快く応じてくれた方々に対して感謝の意を表している。
災害対策本部が構築され、システムがあっても、それが機能しなければ役に立たない。
助かる見込みのあった命が失われる結果となるかもしれない。臨機応変に対応しなければならない。
とにかく、市民は市民の生活を守るので必死だったけど、そんなとき、災害対策本部が、こんな状況だったか、知ることは意味があると思った。
岩手は広いので、被災地はどうしても対岸の火事と思いがち。
でも、東北に限らず、今後、日本各地で災害が起こりうることを考えれば、全国の人に読んで欲しいし、何より、震災の時のことを知って欲しいし、忘れないようにしなければと自戒の意味も込めて思った。
というわけで、本にもあった、原発問題にも触れたいけど長くなったのでこのへんで。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!!
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